歯周病を防ぐ正しい
歯磨きの方法とコツ
歯ぐきから始まる歯周病、
今日からできる予防ケア
歯周病は、歯肉の炎症や歯を支える骨の破壊を起こす病気で、40代以降の日本人の約8割が何らかの症状を持つといわれています。
初期の段階では痛みが少なく、気づかないうちに進行してしまうのが特徴です。しかし、歯周病の最大の原因であるプラークは、正しい歯磨き習慣で防ぐことができます。毎日磨いているのに歯肉が腫れる、血が出る、口臭が気になるという方は、磨き方に見落としがあるかもしれません。
ここでは、歯周病を防ぐための正しい歯磨きの方法と、歯ブラシや補助道具の選び方、さらに避けたい間違った習慣について詳しく解説します。
歯周病を防ぐ
歯磨きの基本手順
 
1)歯ブラシの持ち方を見直す
歯ブラシはペンを持つように軽く握るのが基本です。
強く握ってゴシゴシと力を入れて磨くと、歯肉を傷つけて逆に炎症を悪化させてしまうことがあります。
2)歯と歯肉の境目を重点的に
歯周病菌は、歯と歯肉の間にある歯周ポケットで繁殖します。
この汚れを取り除くには、歯ブラシを歯面に対して45度の角度で当て、小刻みに動かす「バス法」が効果的です。毛先を歯周ポケットに届くように意識しながら、1本〜2本ずつ丁寧に磨きましょう。
3)1回の歯磨きにかける時間
1回の歯磨きは、最低でも3分以上を目安に行いましょう。
特に、奥歯の内側や下の前歯の裏側は磨き残しが多い場所です。口の中を4つのブロック(右上・左上・右下・左下)に分け、それぞれを順番に磨くと、磨き残しを防ぎやすくなります。
4)歯ブラシは
1ヵ月に1本を目安に交換
毛先が広がった歯ブラシでは汚れを落とす力が大きく低下します。
見た目がきれいでも、使い続けて1ヵ月経ったら交換するのがおすすめです。毛先がまっすぐで弾力のある状態の方が、歯肉の際までしっかり届きます。
歯ブラシの選び方と
使い方のコツ
 
1)ヘッドは小さめ、
固さはふつうを選ぶ
歯周病予防では、細かいところまで毛先が届くことが重要です。
大きなヘッドでは奥歯の奥や頬の内側に近い部分が磨きにくく、磨き残しが発生しやすくなります。
比較的小さめなヘッドの歯ブラシを選ぶことで、口の中を隅々まで動かしやすくなり、細かな部分の汚れも落としやすくなります。
また、歯肉が腫れている時期に硬いブラシを使うと、痛みや出血を悪化させることがあります。
歯ブラシの固さは「ふつう」を選び、知覚過敏がある方や歯肉が下がって歯の根元が露出している方は「やわらかめ」を選ぶと良いでしょう。
さらに、毛先が細いタイプは歯周ポケット内に入りやすく、プラーク除去率が高いとされています。
2)歯並びに合わせて
ブラシを選ぶ
歯並びの状態によって、適したブラシの形は異なります。
歯が重なっていたり歯列がデコボコしている場合、普通の平型ブラシだけでは毛先が届かない部分が出てきます。そのような場合は、先端が小さく細い「ワンタフトブラシ」が効果的です。
ワンタフトブラシはピンポイントで動かせるため、通常の歯ブラシでは届かない角度からプラークを除去できます。使う際は、ブラシの先端を歯肉の際に当てて、円を描くように軽く動かすのがコツです。
3)歯磨き粉の量と選び方
歯磨き粉は多ければ良いというものではありません。
多すぎると泡立ちで磨いた気分になってしまい、実際には磨き残しが出やすくなります。
歯ブラシの3分の1ほど(約1cm)を目安に使用しましょう。
歯周病予防には成分選びも大切です。おすすめの成分は以下の通りです:
- ・殺菌成分(CPC、IPMP)
 …歯周病菌や虫歯菌の増殖を抑える
- ・抗炎症成分(トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム)
 …歯肉の腫れや出血を抑える
- ・フッ化物(フッ素)
 …歯質を強化し、虫歯予防にも効果的
これらの成分を含む歯磨き粉を選ぶことで、歯周病予防に役立ちます。
4)磨く順番を決めて習慣化
毎回磨く順番を決めておくと、磨き残しを防ぐことができます。
たとえば「右上の奥から外側→前歯→左上→左下→右下→内側→咬む面→舌側」というように順番を固定すると良いでしょう。
順番を決めることで、毎回同じように磨けるため、磨き残しが減ります。
歯磨きの時間は3分以上を目安に、テレビを見ながら、お風呂に入りながらの“ながら磨き”でも構いません。
大切なのは、毎日欠かさず丁寧に続けることです。
補助的清掃用具の
使い方(フロス・歯間ブラシ)
 
1)デンタルフロス
歯ブラシでは届かない歯と歯の間の汚れは、フロスを使って除去します。
特に、歯と歯の接触面のプラークは歯ブラシの毛先が入りづらく、むし歯や歯周病の原因になりやすい部分です。
フロスは指に巻きつけるタイプと、持ち手付きがあります。
初心者の方には、扱いやすいホルダータイプがおすすめです。
使用する際は、フロスを上下に動かして汚れをこすり取るようにします。
力を入れすぎず、歯の側面に沿わせながら動かすと、歯肉を傷めずに汚れを落とせます。
最初は出血することがありますが、これは炎症によるもので、継続するうちに改善していくケースがほとんどです。
2)歯間ブラシ
歯と歯のすき間が広い部分や、歯肉が下がって根元が露出している部分には歯間ブラシが効果的です。
特にブリッジやインプラントの周囲は汚れがたまりやすく、歯ブラシだけでは不十分なことが多いです。
歯間ブラシにはサイズがあり、無理に大きいものを使うと歯肉を傷つけてしまうので注意しましょう。
歯科医院で自分に合ったサイズを選んでもらうのが理想的です。
使用時は、鏡を見ながらまっすぐ歯と歯の間にゆっくり入れます。
奥から手前へ、手前から奥へと2回〜3回軽く出し入れするだけでOKです。
無理に押し込まず、引っかかるようならサイズを小さく変更しましょう。
また、金属ワイヤー部分が歯面に当たらないよう注意してください。
3)舌ブラシや
マウスウォッシュも活用
歯周病の原因菌は、歯だけでなく舌や粘膜にも付着しています。
舌ブラシを使うことで、舌の表面に付着した舌苔を取り除けます。
使用する際は、力を入れずに奥から手前に軽くなでるように動かすのがコツです。
強くこすると舌を傷つけることがあるため注意が必要です。
マウスウォッシュも毎日のケアに取り入れると効果的です。
歯磨き後の仕上げに使用すると口腔内の菌の再付着を抑えられます。
アルコールタイプが刺激に感じる場合は、ノンアルコールタイプを選ぶとよいでしょう。
歯磨きでよくある
間違いと注意点
 
1)力を入れすぎて磨いている
しっかり磨かなければと力を入れすぎると、歯肉を傷つけたり、歯の根元が削れて知覚過敏を起こしたりすることがあります。
毛先が軽く広がる程度の圧力が理想です。
強く磨くよりも、軽い力で長く丁寧に磨くのがポイントです。
2)同じ場所ばかり磨いている
特に前歯の表面ばかりを重点的に磨き、奥歯や裏側をおろそかにしてしまうケースが多く見られます。
歯周病は目に見えない奥の歯肉から進行するため、見えにくい場所ほど意識して磨くようにしましょう。
3)短時間で済ませてしまう
時間をかけずにサッと磨くだけでは、プラークを落としきれません。
特に夜の歯磨きは重要で、寝ている間は唾液の分泌が減り、細菌が繁殖しやすくなります。
寝る前の3分+フロスや歯間ブラシ1分を毎日の習慣にしましょう。
歯周病予防のために
避けたい生活習慣
 
1)喫煙
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、歯肉の血流を悪化させます。
その結果、歯周組織の修復が遅れ、歯周病の進行を早めることがわかっています。
さらに、出血や腫れなどの自覚症状が出にくくなるため、発見が遅れるリスクもあります。
2)不規則な生活やストレス
睡眠不足やストレスが続くと、免疫力が低下し、歯周病菌に対する抵抗力が弱まります。
規則正しい生活リズムと栄養バランスの取れた食事を意識することが大切です。
3)間食や糖分の多い飲食物
糖分は歯周病菌やむし歯菌の栄養源です。
特に、ダラダラと長時間食べ続ける間食習慣は、口腔内環境を悪化させます。
食後には必ずブラッシングを行い、どうしても難しい場合はうがいやガムで口腔内を清潔に保ちましょう。
よくある質問
 
Q. 歯周病を防ぐための基本的な歯磨きの手順やポイントは何ですか?
A.歯と歯肉の境目を意識し、歯ブラシを45度に当てて小刻みに動かすバス法が効果的です。
1本ずつ丁寧に磨き、1回3分以上を目安に行いましょう。特に寝る前の歯磨きは、細菌の増殖を防ぐために大切です。
Q. 歯ブラシの種類や選び方、補助的な道具(フロス・歯間ブラシなど)の使い方のコツは?
A.小さめのヘッドで毛先がやわらかい歯ブラシを選びましょう。
フロスは歯と歯の間の汚れ、歯間ブラシはすき間や根元の汚れを落とすのに向いています。歯並びや装置の有無に合わせて使い分けると、より清掃効果が高くなります。
Q. 歯磨きでよくある間違いや、歯周病予防のために避けるべき習慣は何ですか?
A.力を入れすぎて磨くと歯肉を傷める原因になります。
軽い力で時間をかけて磨くのが基本です。また、喫煙や口呼吸、睡眠不足なども歯周病を悪化させる要因となるため、生活習慣の見直しも大切です。
セルフケアのやり方を見直して
歯周病予防を
 
歯周病は、毎日の正しい歯磨きで予防できる病気です。歯と歯肉の境目を意識し、力を入れすぎず、丁寧に時間をかけて磨くことが大切です。
また、歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を併用することで、汚れの除去率が上がります。
さらに、生活習慣の見直しや定期的な歯科検診も歯周病予防には欠かせません。
毎日の積み重ねが、10年後、20年後の歯の健康を守ります。今日からぜひ、自分の歯磨きを見直し、正しいケアを習慣にしていきましょう。
 
  
 